より強固なITガバナンス実現のため挑んだ、新たなシステムの導入
大京の情報システム部門の役割は、IT活用により不動産事業を支え、拡大していくことにあります。私が担当するインフラ領域においては、大京のインフラシステム全体のグランドデザインを描き、実現に向けたさまざまな取り組みを行っています。これまでに手がけた大きなプロジェクトの一例としては、特権IDの集中管理システムの導入があります。
大京のITインフラの目指すべき姿を実現するには、ITガバナンス管理状況を強化し、財務会計監査対応への信頼性をより強固にすることが求められていました。そこで優先的に対応しなければならないと考えたのが、特権ID管理体制の見直しです。通常のユーザーよりも強力な権限を持つ特権IDは、不正利用された際のリスクが高いため、厳格な管理が必要となります。当初は運用マニュアルの整備などを通じて、人の手による管理・運用体制を改善する取り組みを実施しましたが、完全な管理を実現することは難しいという結論に至りました。そこで特権IDを管理するシステムを導入するために、情報システム部から経営に向けた提案を実施することを決めました。
入念な検証と第三者評価をもとに、経営陣の承認を獲得
特権IDをシステムで管理できれば、適切なユーザーにのみ使用を許可することや、いつ誰がアクセスし、何をしたかを追跡することが容易かつ確実に行えるようになります。しかしシステム導入にかかる費用は非常に高額で、システムへの投資の必要性やその費用対効果について、経営陣にどう理解してもらうかがプロジェクトを進める上での大きな壁でした。
提案にあたり、さまざまな角度から導入メリットの検証を重ねました。まず特権IDを人の手で行うとどうなるかのシミュレーションを行い、財務監査に求められる要求を満たすことができるのかを検証していきました。その結果をもとに、財務監査に求められる指標と比較したり、第三者の評価を活用したりし、手動によるID管理のリスクと、システムに導入によるメリットを明確にしていくことで、導入提案をより強固なものにしていきました。これらの検証結果を踏まえた提案を経営陣に直接実施することで無事承認をいただき、システム導入を開始することができた際には、大きな達成感を得ることができました。
経営基盤の強化に向け、ITインフラ領域から踏み込める
特権IDの集中管理システムは、2024年の10月末から実際に稼働しています。特権ID管理を1ステップ進められたことはうれしく思っていますが、まだまだ運用面での改善に取り組み続けているところです。ワークフローや設定を入念に整備すると、その分環境が変化した際の影響範囲が大きく、運用負荷は想定以上にかかっているのが現状です。それを改善していくために、事前作業の自動化などに取り組んでいます。
ユーザーの利便性においてはまだまだ解決すべき課題があります。しかし長期的な目線で見ると、適切なアクセスを安全に行えるようになったことで、ITガバナンスが向上し、セキュリティインシデントの際の原因究明と早期対策がスムーズに行え、負荷が減る効果が期待できます。数年後には、「このシステムがなければ事業が成り立たなかった」と評価されることを確信していますし、「企業の存続のために大きな貢献ができた」と胸を張って言えるソリューションになるはずです。大きな変革には苦労も伴いますが、大京のさらなるビジネス拡大、そして経営基盤の強化に向けてITインフラ領域から提案し踏み込んでいけることに大きなやりがいを感じています。
事業拡大に寄与するITインフラ基盤づくりに携わる醍醐味
今回の特権ID管理システム導入プロジェクトを通じて、大型プロジェクトを実現させるための検証力や提案力を飛躍的に向上させることができたと感じています。社内にはまだまだレガシーな仕組みが残っているので、新しい試みを実施するために、さまざまな確認・検討や調整が必要ですが、それらを乗り越えてプロジェクトを実現できたときの喜びは非常に大きいです。ITインフラは業務の円滑な遂行を支える重要な存在です。安全で快適なインフラを提供するための一歩を進められたこと、またそれにチャレンジできる環境で仕事ができていることは大きなやりがいです。
近年のITインフラ領域は新しい技術やサービスが次々と登場していますが、大京の情報システム部は最新技術への感度が高い人財が多く、技術をビジネスに組み込む試みがスピード感を持って行われていると感じます。今後もITグランドデザインに沿った新しい取り組みが加速する方針です。ゆくゆくはAIやゼロトラストなども大京のITインフラに組み込み、業務の円滑な遂行を支え、事業拡大に寄与するビジネス基盤づくりに役立てたいと考えています。